自分の小さな「箱」から脱出する方法を読んで ~感想編~
本記事は、こちらの記事の後編になります。
はじめに
この本は、Google, IBM, NIKEなどの有名企業の研修に使われているらしいです。すごいですね。実際に内容もすごかったので、感想文と得た学びをどう活かしているかみたいなところを書いていこうと思います!
上の要約編と今回の感想編の両方は人間関係に悩む全ての人のお役に立てるかもしれません。
読みながら思ったことや実践していること
その1 人間関係悪化のサイクルをメタ認知できるようになる
この本の良かった点は、「自分が相手のことをまっすぐ見ることができているかどうかを考え直すきっかけになる点」だったり、「人間関係悪化のサイクルをメタ認知できるようになる点」だと思いました。
他者と揉めたときは特に、相手のことを必要以上に悪い人だと思い込んでしまったり、自分に非がないと思ってしまったりしていると思います。つまり、物事をまっすぐ見ることができていない状態になっています。そしてその歪んだ状態に気づけるようにしてくれたのがこの本でした。
その2 価値観として定着する前に箱から出ないと
物事をまっすぐに見ることができていない状態が続いてしまうと、それが価値観として定着してしまいます。本書だと、このことを「箱を持ち歩くようになる」と表現していました。
価値観のレベルで定着してしまったものを変えることは難しくなるだろうなぁと思いました。例えば、他者のことを批判的に見る癖がついてしまった結果、他者の悪い部分だけ見るようになり、最終的に他者は信用できないみたいな価値観が定着してしまうと思っています。
価値観として定着する前に抜け出したいですね。
その3 歪まないためには、バイアスを作らない
本書を読んで、私は「歪み始め」がどこにあるかを考えました。本書では「自分に嘘をついた時」や「自己欺瞞」と表現していましたが、よく聞く言葉としては、「バイアスを作った瞬間」だと思います。バイアスとは、意思決定を効率よく行うためのショートカットのようなもので、脳の機能として備わっています。しかし人間関係においては、「バイアスを作ること」が、正しく相手を判断できなくなる状態を作っていると思っています。その理由は相手はちょっと見ない間に発達する(変わる)し、多様な側面をもっているからです。
皆さんにもバイアスを持たれてコミュニケーションを取られていると感じる場面は多い気がします。
親とコミュニケーションを取るときに、自分のことを子供の頃の自分として接せられると、なんかズレてるような感覚がして、「もう子供じゃないんだから!」というのがよくある例でしょう。
その4 バイアスを作らないためには、人をジャッジしない
バイアスを作らないために、私は人を簡単にジャッジしないことを心がけるようになりました。少し前の私は、相手が私に対して嫌なことをしてきた時に、私は相手のことを「自分のことを傷つけてくる嫌な人」とジャッジしていました。本書の表現をつかうと箱の中に入っていました。
しかし、実際に「相手が私のことを傷つけてくる嫌な人」になるかどうかは、その後の自分の行動によって変わることがわかりました。
どういうことかというと、以下の流れです。
私が相手のことを「嫌なやつ」とジャッジする
私は相手に対して「相手も私を傷つけてくるんだから自分も相手を傷つけてもいいや」と思うようになる
相手に対して心無い言葉がでるようになる
雑に扱われるようになった相手も私を雑に扱うようになる
上記のように自分の行動によって相手は私に対して箱に入ってしまうので人間関係は崩壊に向かっていきます。実際のところ相手は悪人ではないのにです。
なので私は
「心の真ん中は綺麗だけど、日々のストレスで余裕がなくなって、相手を気遣う余裕がなくなってしまい、たまたま引き出しの1番奥からポロッと出てしまった言葉」
で相手を悪人とジャッジしないように心がけるようにしました。
その5 映画「怪物」の感想文が本書の内容と関連していたよ
ジャッジしないようにした経緯の一つにこちらの映画感想文記事を読んだことがあります。ネタバレ要素はないと思うんですが、感想文の内容が濃く映画を見た気になれる素敵な感想文でした。シンプルに背筋が伸びました。
人間関係においてはバイアス(人をジャッジしたタイミングで作られるもの)が知らない間に人を傷つけているというケースが出てきてしまうリスクがあるという内容です。
多様性が重視される世の中になってきましたが、バイアスを作るという行為は「型にはめる」という行為で、自分のものの見方の中に「個性を排除するという力」が働いてしまいます。これはなんとしても防ぎたいなと思っているところです。
ただ脳の処理の効率的にバイアスは必要なので、理想はバイアスを作ってもいいけど、自分がどのバイアスを持っているかは常に内省によって把握しておきたいというところですかね。
その6 人間関係で揉めたときは相手を変えようとしないことが大事
本書には、「人間関係で揉めたときに、相手を変えようとするのは無駄なので自分が変わりましょう」と書いてありました。言いたいことはわかるんですが、読んでいる途中は、これが心の底から純粋な気持ちで行えるほど発達した人がいるのか!?と思いました。
なぜなら人間は究極的な意味で自分のためにしか生きられないからです(自己保存本能)。それに加えて、対立した時なんて、相手を敵とみなしているわけで、敵のために自分を変えようなんて思えないんですよね。
ただ読み進めていくと納得させられて、自分のものの見方をアップデートできました。自分なりの言葉でまとめます。
その7 本書が出している宿題は2つ
本書を読むと、自分が相手のことをどう見ていたかを考えさせられますが、それだけでは、人間関係の問題を解決できるようにはなりません。解決するにはこれに加えて、2つの宿題があると思いました。
内省による自己理解
そもそも自分が相手をどう見ているかは、内省の時間を取らないと気づけないから
自分なりの「ものの見方の変え方」を洗練させる(レジリエンスの強化)
人間関係の問題を解決するには自分を変えることが必要だから
その8 心理的安全性との関連
近年、「心理的安全性」という言葉をよく耳にする理由が本書の内容で説明できるのではないかなと思いました。
本書では、自己欺瞞(心理的安全性を下げる要因)は人間関係や組織のいたるところに存在し、それが次第に物事をまっすぐ見ることができなくさせ、組織の生産性を下げると書いてありました。自己欺瞞に冒されて生産性が下がっていかないように、心理的安全性が必要という関係になると思います。
自己欺瞞によって起こる最初のことは、自分自身に嘘をついたことによって、その気持ち悪さを解消するために「自分を正当化するようになること」です。それが続くと物事をまっすぐ見ることができなくなってくるんですが、そもそも正当化しなくても良い状態というのが「心理的安全性」があるということなのかなと思いました。
その9 構造主義哲学のススメ
本書で言われていることを実践するのに役立つ考えが構造主義哲学です。
人間には主体的な理性は存在せず、社会構造や生命の構造や幼少期の経験といった人間がコントロールできない背後にある仕組みによって動かされているという考え方です。要するに人間は構造の奴隷であるという考え方です。
頑張ってる人は、その人の主体的な理性によって頑張ることを決断してるから偉いみたいな考えではなく、あの人が頑張れているのは過去の経験が作り上げた価値観で動いてるからだ。頑張るという特性を得ることができたのはあの人自身がコントロールできない幼少期の偶然与えられた経験があったからだ。つまりそこに偉いかどうかみたいな物差しはなく、一つの個性であるという考えです。
これがどう活かせるかというと、
例えば、相手に酷いことを言われたときに、相手が主体的な理性を持って自分のことを傷つけようとしたわけではなく、相手を取り巻く環境(仕事のストレスとか、幼少期の経験とか、現在の健康状態とか)が相手をたまたま攻撃的にさせているだけになります。
と考えると、相手は「こーゆー人間だ!」とジャッジすることもないし、自分自身が傷つく理由も減ります。
その10 自分のニーズを特別視すると歪む
本書に書かれているもう一つ重要な考えとして、「他者のニーズと自分のニーズの価値は等しい」ということです。人はどうしても自分のニーズを特別視してしまうので、揉めてしまいます。
しかし他者も自分と同じように、独自のニーズや心配事、世界観やルールを持っていると考えることができるようになると、物事をよりまっすぐ見れるようになります。
例えば、二人がけの席に自分が座っていたところに、カップルが来たとします。しかし、空いているのは一人がけの席だけだったとします。このときに、「自分が逆の立場だったら私に席を動いて欲しいなと思うだろう」と考え、席を移動できるならば、相手のニーズと自分のニーズを平等に見れているでしょう。
その11 良いリーダーシップの定義は物事を真っ直ぐに見れること
本書には良いリーダーシップについても書かれていました。それは「物事を真っ直ぐに見れること」と書いてありました。
ここで、物事を真っ直ぐに見ることができていないケースを考えてみます。
あるチームの中にノルマ達成ができていないメンバーがいます。そのメンバーがノルマを達成できなかったせいでチーム目標が達成できなくなりました。リーダーはメンバーがノルマ達成できるように働きかけていましたが、結果的にチーム目標が達成できなかったのでリーダーの評価がいまいちになってしまいました。そのリーダーは自分の評価がイマイチだった理由を、メンバーが意欲を持って仕事に取り組まなかったとか、リーダーのことが嫌いでわざと足を引っ張ろうとしていると思うようになってしまいました。その後、リーダーはそのメンバーとのコミュニケーション頻度が減り、仕事も簡単なものばかり任せるようになりました。
一方部下は、成長意欲もあり、自分の欠点を直そうとしているけどうまくいってなくて自己嫌悪に陥って一時的に意欲がなくなっているだけだったとします。しかし、リーダーとの関係が悪化してしまい、さらに身動きが取れなくなってしまいました。そして簡単なタスクばかり渡されるようになったので、もう自分に期待をしてくれていないということを感じ取り、仕事を適当にこなすようになりました。
上記のケースはわかりやすいケースとして創作してみましたが、実際は自分が全く気づいていないけど、物事を歪んだ目で見ていることがあると思うので一つずつ直していきたいなと思いました。
その12 転職して良かったこと
私が転職して1番良かったなと思うことと本書の内容がマッチしているなと思ったので紹介します。
前の職場では、開発していたサービスにそこまでの愛情は無かったので会社の成長にコミットするみたいなモチベーションではなく、自分の評価を上げて早く出世したいというモチベーションで仕事をしていました。
今の職場ではサービス自体とても好きでもっと世の中の人に知ってほしいし使ってほしいと思って仕事ができています。今までは自分のために仕事をしていた人が、子供を授かった時にこの子のために仕事をしようと決心するみたいな感覚に近いと思います。
要するに自分が目指しているところと会社が目指しているところが一致してるんですよね。なので評価軸と自分軸にズレがないので歪まないんです。偶然ですが、物事を真っ直ぐに見れる状態になれたというのが、自分にとって転職大成功の理由です。
その13 正しいことを間違ったやり方でやってしまうことはよくあるよね
本書では、「物事を真っ直ぐに見れない状態では正しいことを間違ったやり方でやってしまう。そしてそれは非生産的な反応を引き起こすことになる。」と書いてありました。これは自分にも世の中に対しても思い当たる節が多いなと思います。
例えば、社会問題について変革を主張している人は「世の中を良い方向に向けていく」という意味で正しいスタンスではないかと思います。しかし、変革をしようとしない人を攻撃したり、ステークホルダーの合意を取らずに改革を進めたりするのは間違ったやり方だと思います。
なぜなら、個人の価値観レベルで見ても変化には、相当な肉体的・精神的苦痛を伴うからです。変わることへの恐怖やその人自身ができる努力の最大出力みたいなものは人によって違います。変化を要求する側のペースに合わせて変化してくださいというのは、個人の心配事や能力を無視している(箱に入っている)に等しいからです。こうなると非生産的な反応を産むことになってしまいます。
正しい方向に向かおうとしている人々に対して、例えばジェンダー問題で言うと「フェミニスト」という言葉が一部、ジャンダー問題の過激派を揶揄する言葉として使われるようになってしまっているのも、非生産的な反応の一つだと思います。
まぁ実際のところ、社会問題については変革派も保守派もどっちが悪いとかはないと思います。「過激な行動が出てしまう」というのはその問題への認識が甘い人たちが意識的/無意識的に傷つけてしまったことのリアクションだと思います。双方ともに、自分が思う良い状態を作ろう/維持しようと努力しているんだと思います。
社会問題のように多様で平等なステークホルダーがいる問題に対しては、ハレーションを起こさないで進めていくというのが変革の最高速度なんじゃないかなと思います。
最後に
相手が自分に対して箱に入っていると感じた場合は、間違いなく自分が相手に対して箱に入っている状態を表します。自分が変わることができれば自分が箱から出ることができ、その結果相手も箱から出てくるので、自分の柔軟性は年齢を重ねて行ったとしても失わないようにしていきたいです。
この本を読んで、柔軟性の高め方を別記事でまとめたので、最後に共有しておきます。
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