今起きていることの本質を掴むシステム思考 -世界はシステムで動く-
最近はジムでバタフライをしているんですが、水泳っていうのはすごく面白くて。というのも筋肉任せに体を動かしても全然進まないんですよね。水の抵抗がえぐいんですよ。まぁトレーニングにはなるからいいんですけどね。でも、おかしいじゃないですか。こんなに筋肉があるのに、隣で泳いでいるおばちゃんのバタフライの方が早いんですよ。マジで悔しい。
自分の泳ぎ方が下手くそなのか、あのおばちゃんの前世がカジキかのどっちかだと思ってますが、後者は検証ができないので、勝手に前者だと思い込むようにしてバタフライフォームの改善をしています。
はい、今日も頭が筋肉でできているあたまがきんに君です。
今回は「世界はシステムで動く」の読書感想文記事を書こうと思います。
ですが、今回は要約は載せずに自分の理解を自分の言葉で共有していく回にしようと思います。「システム思考が有用すぎていろいろな人に紹介したい!」というのが今回のモチベーションになります。
構成はこちらです。大きく分けて3パートあります。
こちらの有料マガジンを買えば、他の読書感想文もお得にまとめ買いできるのでおすすめです。
システム思考をオススメする理由
なぜシステム思考を使うのか?
一言で言えば、システム思考は世の中で起きていることの本質を捉える力を持つからです。システム思考を用いて、自分の身の回りで起きていることの本質を捉えなければ、我々はしばしば無意味な施策を繰り返したり、回り道をしたり、逆方向に物事を進めてしまったりします。そして、世の中はなんでこんなにうまくいかないんだと絶望することになるかもしれません。
世の中は想像している以上に複雑で、直感とは反する出来事に溢れています。そのため、我々はしばしばこの世界の挙動に驚かされてしまいます。
ダイエット計画が思うように進まなかったり、年収と幸福度はある点から急に正の相関を持たなくなったり、戦争が終わらなかったり、事業成長が思った以上に好調すぎたり、幸せになるためにこだわっていた自分のものの見方を捨てた瞬間に急にこの世界が優しく見え始めたり。
しかし、これだけ複雑な世の中を注意深く観察していくと、世界はある目的のために一貫した挙動をもつ要素のつながり(要するにシステム)で動いていることがわかります。それぞれの要素(サブシステム)の挙動は一貫していますが、その複雑な組み合わせや構造により、直感とは反する複雑な挙動を生み出しています。
システム思考は、複雑な世の中を正しく観察し、一貫した挙動を生み出している構造を明らかにし、驚きを減らす力を与えてくれます。そして、世の中にあるシステムを設計し直して、望む挙動をもたらすことができるようにする力も与えてくれるでしょう。
例えば、自分の幸福度について考えてみる
例えば自分の幸福度というストックの経時的変化(幸福度増幅システムのアウトプット)について、以下のような挙動だったとします。仕事で成功したとか、愛犬が亡くなったとか、風邪を引いたとかで幸福度というものが増加したり減少したりします。
ですが、理想は安定的に幸福度を増幅させ続けること、外部環境の変化があっても自分の幸福度にはマイナスの影響がない状態にすることが良いですよね。
ずっと幸せな状態を維持したいので、「幸福度増幅システムの挙動を直したいな」と思うじゃないですか。
システム思考が使いこなせるとシステムの直し方がわかる
システム思考が使いこなせるようになると、例えば、幸福度増幅システムの挙動について、以下の図のような形に持っていくことができます。
要するに、何かしらの施策を実行することで、システムの構造を「好ましい挙動を生み出す形」に変えることができます。
幸福度に関することだけでなく、あなたの身の回りには、コントロールしたいストックがたくさんあるはずです。
それらに対して、私たちは施策(ダイエット計画を立てたり、事業戦略を立てたり、資産形成についての勉強をしたり、キャリア設計をしたり、人間関係の改善、モチベーション管理)を打つわけですが、これらのストックに影響を与えているシステム構造が背後にあり、予測やコントロールが難しい複雑な挙動を生み出しています。
そして、施策によって挙動をコントロールすることで、例えば、ダイエットに関しては体重を適切なボリュームまで下げて維持したいし、スタートアップの事業戦略だったらT2D3以上のスピードで成長したいし、人間関係は基本的に関係値を深めながら維持・拡張したいですし、資産形成では総資産はできる限り増やしながらリスク分散度合いを高めたいですし、モチベーションもできる限り高いレベルに保ちたいですよね。
これから、ストックを望ましい挙動に近づけるための施策の探り方も踏まえて勉強していきましょう。
システム思考を手中に収めよう
そもそもシステムとは?
つまり、本書でいう「システム」とは、情報システムのような狭義的な意味でのシステムではなく、考えられる限り一番広義的な意味でのシステムになります。経済や生態系、人間の循環器系、サッカーチーム、エアコン等様々なものが広義的な意味でのシステムに該当します。
システムの基本概念を身につける
まずは、ストックとフローを理解しましょう。
先ほどの幸福度のシステムをストックとフローの概念を用いて一番シンプルに表すとこちらになります。
この幸福度というストックに関するインフローがアウトフローに比べて優位になれば、一時的に幸福度は増幅し続けます。逆に、アウトフローがインフローよりも優位になると、幸福度は減少し続けます。
その結果、幸福度というストックは上記のようなダイナミクスを持ちます。
そして、ストックのインフローとアウトフローを作っているシステム構造を理解していくことで、幸福度というストックのダイナミクスを説明できるようになります。
構造とは何か?
システムにおける構造とは何かという話をします。
例えば、こちらは構造でしょうか?
猫を愛でるという行為は、確かに幸福度に対してインフローになります。しかしこれは構造ではありません。なぜならば、「猫を愛でる」というのは行為であり測ることができません。つまり、ストックではないからです。また、猫を愛でている時間はインフローがありますが、愛でていない時間はインフローが途切れます。このように、「ある時点のみインフローが発生する状態」は構造とは言いません。
構造とは、強く安定しているものです。
猫を愛でるではなく、「猫を愛でる頻度」とすればストックとなり、測ることができます。もしくはもう少しストックを抽象化して、猫を愛でることによって得られる幸せホルモンの「オキシトシン量」としてもいいかもしれません。オキシトシンは安心感などからくる幸せホルモンです。
そして、「オキシトシン量」へのインフローを作っているストックとして、「猫を愛でる頻度」があるみたいな関係性になります。このように抽象度の高いものから、具体度の高いものに階層構造を作って落とし込んでいくというのがシステム構造を明らかにしていくという作業になります。
システム構造は通常、抽象度の階層を何層も持っています。そのため、ストックはできるだけ抽象化しておくことがシステムの挙動を観察していく上で非常に役に立ちます。
さらにオキシトシンというものは性質上、何かをトリガーにして一時的に分泌されるものです。そのため、ストックを「オキシトシン量」とすると、幸福度に対して不安定な構造になってしまいます。なので、「オキシトシンの累計分泌量」と「オキシトシンの供給頻度」もしくは「オキシトシン量の平均供給量」と設定してみると、より本質的に幸福度のダイナミクスを好ましい方向に傾けることができるでしょう。
システムのコントロールメカニズムを知る
ストックのインフローとアウトフローを調べていく上で、もう一つ重要な知識があります。それは、「システムがどのように自らを動かすか?」です。これはシステムのコントロールメカニズムと呼ばれており、コントロールメカニズムは、フィードバックループというものを通して機能します。
フィードバックループというのは、ストックの変化がその同じストックに入ってくるインフローやアウトフローに影響を与えるもののことを指します。
フィードバックループには二つのタイプがあるのでそれぞれ見ていきましょう。
自己強化型フィードバックループ
ストックを増加させ続ける、もしくは減少させ続けるメカニズムのことです。例として預金額と利率の関係をみてみましょう。
預金額は多ければ多いほど利率の影響を受けます。年利とかでしたら、1年に一回のペースでフィードバックが周り、それによって増えた預金額によって、翌年の預金額の増加分は上がります。
これにより預金額というストックは以下のようなダイナミクスを持ちます。
要するにストックの増加がインフローの増加をもたらし、それがフィードバックループとして回り続けるため、預金額というストックを増加させ続ける強力なメカニズムが働きます。
実際は、「預け入れ」や「引き出し」というインフロー、アウトフローがあり、その量に対して利率が低すぎるため、預金額における利子がストックの変化を支配的にコントロールする訳ではありません。そのため、預金額の経時的変化は上記のような形になることはほとんどないでしょう。
バランス型フィードバックループ
ストックの値を一定の値に保ち続けようとするメカニズムです。例として人体に備わっている体重調整システムをみてみましょう。
人体には体重を適切な値に保とうとするメカニズムが存在します。体重が増えすぎると、基礎代謝量が上がるため、体重が減少しやすくなります。逆に体重が減りすぎると体はエネルギー消費を抑えるため、痩せにくくなります。
仮に、体重管理システムに影響を与えるもののうち、基礎代謝が支配的であると仮定した場合、体重というストックの経時的変化は以下のようになります。
実際は人体の体重管理システムの構造はもっと複雑ですし、食事による摂取カロリー量の影響が大きすぎるため、基礎代謝が生み出す体重のバランス型フィードバックループが体重というストックのダイナミクスを支配することはありません。そのため、上記のダイナミクスはあり得ないでしょう。
ストックとフローとコントロールメカニズムが、システムの複雑な構造を生み出し、その構造が非線形的で複雑で予測が難しい挙動を生む
先ほど説明した2つのコントロールメカニズムが、一つのストックに対して多方面に引っ張り合うバランス型、自己強化型ループがいくつもあるケースや、3つとか5つとか10のストックが一つのフロー調整をしていたりします。しかもシステムの構造やメカニズムの優劣が絶えず変化していたりします。
一時的にあるストックの変化において支配的だった自己強化型フィードバックループが弱体化して、代わりにバランス型フィードバックループが支配的になるといったケースも存在します。
例えばプラットフォーム系のプロダクトのユーザ数に着目してみると、ユーザ数が増えれば増えるほどサービスの品質が高まるので、ユーザ数が自己強化フィードバックの影響を受けて増えていきますが、徐々にプラットフォーム上における自分の存在感みたいなストックが減っていくことによって、ユーザ体験が下がってしまうかもしれません。そうなると、どこかのタイミングで、ユーザ数の自己強化型フィードバックループの支配が解除され、「ユーザ数」と「自分の存在感」という2つのストックの間で、バランス型フィードバックループが優勢になるかもしれません。
だからこそ、世の中は非線形に満ちていて、複雑で多様なストックの変化にしばしば驚かされることになります。
なぜシステムはよく機能するのか
その理由は、システムが3つの性質を持つからです。それが、「レジリエンス」、「自己組織化」、「ヒエラルキー」です。
レジリエンスとは、外界の状況が変化しても目的に対して機能し続ける力のことです。一言で言えば柔軟性です。そしてレジリエンスとは通常は観察することができなくて、観察できるとしたらシステムが崩壊する時になります。システムにおいては最重要な性質なんじゃないかなと思います。
自己組織化とは、システムが自らの構造を複雑にしていく能力のことです。身近な例だと、人間の脳は自己組織化を行っています。新しい情報をインプットすることにより脳の構造が全体最適構造に近づいていきます。
ヒエラルキーはシステムとサブシステムの配置のことです。サブシステムはシステムの部分的な目標を持ちますが、システムの目標とは一貫性があり繋がっています。会社の組織をイメージするとわかりやすいかもしれないですね。
この3つの性質の関係性を自分なりに整理してみると、自己組織化によってヒエラルキーが生み出され、それによってシステム構造が複雑化することによって、レジリエンスにつながるみたいな流れだと思います。
システムはなぜ私たちをびっくりさせるか
根本的な原因は、世界を動かしているシステムが複雑すぎるからです。なので直感に反する挙動をすることがしばしばあります。複雑なものを複雑なまま捉えることができなければ、抜け落ちた情報量の分だけ驚く可能性があると思います。
一方で、人間はできるだけシンプルに考えたい生き物なので、「世の中が複雑である」とか「複雑さが増していく」という性質と相性が悪いんですよね。
個人的な意見はさておき、本書で挙げられている「システムはなぜ私たちをびっくりさせるか」の例を羅列しておきます。
システムのレバレッジポイント
システムの挙動を望ましい方向に傾けるには、介入すべきポイントを見つける必要があります。介入すべきポイントとは、より小さな労力で大きな影響を与えることができるポイント、つまりレバレッジポイントです。
本書ではレバレッジポイントの小さい順に12個挙げられていました。
12位:数字
インフロー・アウトフローの量を調整することです。事業戦略においては営業件数を増やすとか、ダイエットにおいては摂取カロリーを下げるとかになります。
11位:バッファー
安定化させるために、ストックに対してバッファーを持たせます。例えば需要が急激に伸びた場合に、ストックが通常時の需要に対応できる分しかなかったら、そのシステムは機能しなくなります。システムを機能し続けるためのバッファーがレバレッジポイントになることがあります。
10位:ストックとフローの構造
ストックとフローの構造は、システムがどのように機能するかに大きな影響を与えることがあります。そのため、最初にきちんと設計して最大効率で(各要素に負担をかけないように)回すというのがレバレッジポイントになります。ToB SaaS事業の組織設計のThe Modelがひとつの正解みたいなことになります。
9位:時間的遅れ
システムに存在する時間的遅れを正しく認識して適切なペースでのフィードバックループによりストックを計測し、過剰投資を止めることがレバレッジポイントになります。もしくは「時間的遅れを縮める」もありますが、こちらは工数がかかりすぎることが多いためレバレッジポイントにはなり得ないことが多いです。
8位:バランス型フィードバックループ
システムを長期的に機能させ続けるためには必須ですが、ほとんど使われていなさそうだしコストがかかるからと削ぎ落としてしまうことがあります。もしくは、何かしらの構造を変えて、バランス型フィードバックではなく自己強化型フィードバックループを優勢にしようとするかもしれません。そうすることで、本質的に重要なフィードバック(システムの機能を維持するために必要なバランス型フィードバックループ)が見えなくなってしまいます。ここでのレバレッジポイントとは、そうさせないことです。
7位:自己強化型フィードバックループ
自己強化型フィードバックループはシステムの挙動を一つの方向に向けていく上で、強力な力を持ちます。ですが、ここでのレバレッジポイントは、成長のスピードを鈍化させることになります。本書の例では人口と経済の成長を例に取っていたので紹介します。
自己強化型フィードバックループがみられるシステム構造の周辺には、落とし穴があることが多いそうです。それが「何かをより多く持っていればさらに多くを持つ可能性が増え、周辺システムの機能を弱め続けてしまう」ということです。この落とし穴が観察できたら、自己強化型フィードバックループを止めてみましょう。
6位:情報の流れ
フィードバックループが止まってしまっている部分を復活させたり、限定合理性という罠を抜け出すために情報の流れを設計するということが、レバレッジポイントになります。
この要素は欠けていることが多いため、注意深く観察したいですね。
5位:ルール
ルールはシステムの領域や境界、自由度を定めます。つまり、システムの挙動パターンを決定するという力を持つため、比較的強いレバレッジポイントになります。ルールを強い順に並べると「法律や罰」、「インセンティブ」、「非公式の社会的合意(倫理観のようなもの)」になります。ただ、過度なルールは中央集権的なシステムを生み出し、モノポリーのような、「成功者はさらに成功するというループ」を生み出し、敗者の存在を排除してしまい、システムとしては脆弱になります。
4位:自己組織化
自己組織化が行われると、システムはまったく新しい構造や行動を生み出して、自らを完全に変えてしまいます。つまり、レバレッジポイントのリストの下位にあるあらゆるものを全て変えうる力を持っています。そのため強力なレバレッジポイントになります。個人や組織であれば、自由さを与えて学習することで、自己組織化が行われます。ですが、この介入点は不人気であることが多いそうです。理由は、自己組織化は変動性や実験、多様性を好む文化によって生まれますが、そうなると本質的に「コントロールを失う」ということになるからです。ですが、これがシステムが機能し続ける力であるレジリエンスを生み出します。
3位:目標
目標がなぜ自己組織化よりも優れたレバレッジポイントかというと、自己組織化ですら、目標によってその方向性を歪められるからです。つまり、目標もこのリストの下位にあるレバレッジポイント全てに影響を与えるためです。
2位:パラダイム
パラダイムはシステムの目標自体も決定しうる、暗黙的で支配的な考え方や共通認識です。「成長は良いことだ」とか「人はモノを所有できる」とか「男性の方が女性よりも偉い」とかです。ただ、ジェンダーの問題が長年解決されていないように、社会レベルでパラダイムを変えるというのは、数百年、数十年単位を要するので、残念ながらレバレッジポイントにはなりません。一方で、個人レベルでしたらパラダイムを変えることはミリ秒単位でもできます。
「自分のものの見方を変えた瞬間にこの世界が優しく見え始めた」みたいな話ですね。
1位:パラダイムの超越
パラダイムの領域に縛られず柔軟であり続けることです。真の目標に向かって適切なパラダイムを選択することができます。そのためには「自分が縛られているパラダイムを客観的に見ること」と「絶対的なパラダイムは存在しないという認識を持つこと」が重要です。
めちゃ難しいけど、個人レベルだったら、成人発達理論でいう自己変容段階のことを言ってそう。成人発達理論についてはこちらの記事で詳しく書いてあるのでぜひ読んでみてください。
システムの世界でよりよく生きる方法
第7章の内容になるんですが、私が面白いとか重要だなと思った部分を自分の言葉に翻訳して列挙しておきます。
言葉を大切にして言語化しまくる
情報をより広くから収集する
内省の仕方を内省する
システムを観察し挙動を理解する
複雑性を祝福する
時間軸を伸ばす
謙虚であり続け学習者であり続ける
自分のメンタルモデルを把握しオープンにする
全体最適を諦めない
他責じゃなくて自責
勇気を持って善の目標を掲げ続ける
読書感想文
レバレッジポイントは直感に反することが多かったから知れて良かった
何かを好ましい方向に傾けようとする際に、焦ったり歪んだりすると短期的には良いけど長期的には破滅に導くみたいなことが多い気がします。
今後何かしらの施策を打っていく上で、この気づきがなければ破滅していたかもしれません。だからこそ本当に知れて良かったと思いました。
2023年は自分の直感に反するような意思決定をいくつかしていましたが、それらがレバレッジポイントに当てはまっていたんだなと振り返れたのも良かったです。
言語化が良い理由はシステム思考的にも説明がついて良かった
言語化とは抽象的だったり曖昧な概念の内部構造を整理して具体性を上げる行為です。システム思考的に表現すると、ヒエラルキーのより下位にあるサブシステムを認識してそれらのサブシステムがどう繋がっているかを覗く行為というイメージです。
幸福度を上げたいという目的があった時の頭の中はこういう感じです。
ここから、「幸福とは何か?」という問いを立てます。
そして、「脳が幸福を感じる物質を出した状態が幸福で、その物質を出す条件というのが幸せになる方法だよね。セロトニンとオキシトシンとドーパミンがあるよね。」と言語化した場合は、幸福度というストックの背後にあるシステムの構造はこのように見えているでしょう。
次に「幸福とは何か?」という問いに対して、コーチング的な視点から言語化をしたとします。
「幸福とは、人生において重要な要素の8個(1.職業、2.お金、3.自己表現、4.趣味・楽しみ、5.自己成長・精神的成長、6.健康、7.愛情、8.家族・友人)がバランスよく満たされている状態である。」と言語化した人は幸福度というストックの背後にあるシステム構造はこのように見えているでしょう。
(だいぶ私のバイアスが入っています)
こんな感じで、どんどん言語化によりシステム構造の理解を深化させていくと、レバレッジポイントを見つけられる可能性が高まります。
だから、言語化はとてつもない力を持っているんだなと思いました。注意して言葉を用いる必要はありますが。
どの視点で切り取って言語化するかで全てが決まる
先ほど挙げた例だと、幸福度を物理的な視点とコーチング的な視点の両方で切り取って言語化しました。その際に、見えてきた背後の構造は全く違うものになりました。
どのパラダイムを持って、システム構造を観察するかという話ですね。
そして構造をどのように表現するかで、当然どのような施策を打つかも大きく変わります。だからパラダイムはレバレッジポイントとしてかなり上位にあるんだと思います。
そして、システムを観察する際に、システムをどのように再設計したいのかによって、観点を使い分けることができるのが良いでしょう。これがパラダイムを超越している状態になると思いますが、めちゃくちゃ難しい。
そもそもパラダイムは暗黙的に持ってしまっているものなので、内省することや、世の中を注意深く観察することによって見つけなければなりません。
観点を使い分けることはできなかったとしても、自分がどのような観点を用いて言語化しているかは、最低限把握しておきたいですね。
たくさんのアンテナを貼るようにしてよかった
本書で限定合理性について紹介されていました。限定合理性とは、システムや人は与えられた情報の中で合理的に機能するという性質です。
自分がある目的を持った別のシステム(例えば会社とか)に属している場合、その目的の中で十分に合理的に振る舞えるように、できる限り自分が持っている情報を増やし続けることが大事でした。
この辺りは当たり前の話ではありますが、システム思考においても重要な概念ということが知れて良かったです。
自分がどのサブシステムで生きるか/生きているのかは超大事
例えば仕事というサブシステムの中で生きるといっても、業界全体の構造を改革したいっていう人と、事業会社視点で何かを変えたいみたいな人と、一社員として現場レベルでどうこうしたいみたいな人で、何を合理とするかが変わるなぁと思いました。もちろん広い視点であればあるほど全体最適に近づいていくので、私としてはそっちを目指したい。
また、相手がどのサブシステムで生きているかを把握することでその相手話をするときの前提の設定の精度が高くなるんじゃないかなと思うので、その辺りやっていきたい。
やっぱり他責じゃなくて自責がいいよね
その理由は簡単で、「他者」はレバレッジポイントには絶対に入らないからです。責任のありかを自分にすることで、自分を取り巻くシステムを観察する動機ができます。また、よりよく情報のフィードバックループが回るようになり、システムとしても良く機能するようになるそうです。
特に人間関係においては圧倒的に自責がいいですよね。「人間関係構築システム」がよりよく機能するためのフィードバックが回るようになると思います。よりよく機能する人間関係構築システムが手に入ったらだいぶ人生豊かになる気がします。
メンタルモデルを白日に晒し続けてよかった
私のnoteは(本当はもっと出し惜しみなく書きたいけど)自分のメンタルモデルについて触れることが多かったと思います。
自分がどういう時に何を感じるか、そしてその感じ方の原因は自分のどういったバイアスにあるのかを分析してはnoteに書いたり、人に話したりしていました。
その結果、システムの世界でうまく生きる術を身につけた気がします。自分の考えが思っているより合理的にできていないことや、自分が持っているバイアスに気付けたり、より本質を捉えた内省ができるようになったりしました。
自分のメンタルモデルはこの世の中と繋がっていますし、自分の身の回りの出来事に大きな影響を持つと思っています。
そのため定期的に棚卸しして、時には人に見てもらって、より発達させていくことをオススメします。自分のバイアスに気づくのは他者と議論するのが一番です。
そしてバイアスに気づいて変えるとか、バイアスに縛られずに生きるというのは、個人レベルで考えた時に最も強力なレバレッジポイントになります。
キャリア形成システムの時間軸を伸ばす決断をしたあの時の自分を讃えたい
こちらの記事で、30歳になるまでにCTOになるという目標が自分を歪ませていることに気づいて、目標の時間軸を伸ばした(取り除いた)ことを書きました。
2023年に行った「直感とは反する意思決定」の一つでしたが、これをシステム思考的に評価すると、良いレバレッジポイントでした。本書には、物事が進むには想定している時間の3倍以上の時間がかかると言われていました。そして、その「時間的遅れ」を誤って認識してしまい、時間軸を短く設定し過ぎてしまうと、過剰投資を生んでしまうという落とし穴にはまります。
2023年が始まった頃は、自分はキャリアファーストで生きていたため、キャリアへの過剰投資を行っていました。当時の私の幸福度増幅システムは極論こんな感じでした。
職業と自己成長・精神的成長がメインでその他はほとんど関係ないという非常にシンプルで分かりやすい構造です。シンプルな構造は外部環境の変化や状態に対応する力はありません。
私の幸福度が、昇進スピードの制約や、自分自身の成長スピードの制約、会社のカルチャーや運などの要素に依存しています。多くは構造を変えようと思ってもなかなか難しいものだったりします。
これでは安定して幸福で居続けることは難しく、幸福度を高めていくには時間がかかり過ぎてしまいます。
そのため時間軸を伸ばし、キャリアへの過剰投資をやめました。
そうすることで私の幸福度に影響を与える「趣味・楽しみ」の要素に投資するリソースが確保できました。少しバランスが良くなったというか、私の幸福度増幅システムの複雑性が増したため、外的環境の状態や変化に対応できる力が少しだけ向上しました。
実際に残業を100時間以上やっていたのが、0時間になりました。それからさらに半年くらいたった今では、これほどまでに豊かなシステム構造になり、幸福で満たされ続けています。
本書の複雑性を祝福するという言葉がとてもスキ
誰もが世の中はシンプルにできてはいないと思っているはずですが、人間は知らないうちに物事をシンプルに考えようとしてしまいます。これは脳の性質だと思うんですが、私はそれに抗おうと生きてきました。その結果、世の中の複雑性にテンションが上がる変態になりました。
シンプルにすることによって抜け落ちる情報量が、そのまま私たちがシステムにびっくりさせられる尺度になると思っていたからです。基本的にびっくりはしたくないですよね。
そもそも複雑性をちゃんと捉えようと思った出来事は二つあります。
一つ目は前職の楽天トラベルでシンプルにできない複雑なシステムの運用をやっていたこと。
二つ目は人をジャッジするとバイアスができて、シンプルになるけどそのバイアスが人間関係を悪化させることがあるということに気づいたことです。
二つ目の例については、映画の「怪物」がわかりやすいかと思います。
システム思考はあらゆる戦略をアセスメントできる力があるかも
p272にも書いてあるけど、システム思考は全てを予測しコントロールすることはできない。そしてシステムの全容を把握することはできない。だけど、システムの複雑さを論理的思考よりも適切に表現でき、その結果システムの直し方というか、介入の仕方(レバレッジポイント)のヒントを与えてくれるものです。
これってまさに戦略の話ですよね。
システム思考的に問題空間を分析すると、今起きていることの本質が掴めるようになるため、効果的な施策が打てるようになります。
今やろうとしている施策が、今起きていることの本質を捉えているかどうかは、システム思考的に問題空間を分析してみるとジャッジできるようになる気がします。
どうやって最強のレバレッジポイントである「パラダイムを超越する」を実行するのか
そもそもパラダイムとは人々の頭の中にある共通の考えです。個人レベルでいうとバイアスのことだと言いました。
そしてパラダイムを超越するというのは、「絶対的なパラダイムは存在しない」とか「自分自身をパラダイムの領域に縛り付けておかないこと」、「柔軟であり続けること」です。
この「パラダイムを超越する」というのが、システムにおける最強のレバレッジポイントになります。
私は「愛するということ」を通してパラダイムを変え続けた結果、柔軟であり続けることが、この世の中を生きる最善の方法だと仮説を立てました。振り返ってみるとそれこそ、パラダイムを超越するということでした。当時の私はこんな記事を書いていました。
柔軟性を身につけるためには、自分の価値観やバイアスを客観的に説明できるようにしておく必要があって、そのために自己分析が必要だよという記事です。
この記事は自分自身が、パラダイムを超越するための方法を模索している最中で、自分の経験を元に言語化していったものです。今でもこれが役に立っています。
また、心から「絶対的なパラダイムは存在しない」と思えるようになったのは、構造主義哲学のおかげです。構造主義哲学の主張自体が、「絶対的なパラダイムは存在しない」と言っているようなものなので、ここを通るのがパラダイムの超越には欠かせないのではないでしょうか。
また、なぜ部下とうまくいかないのかという本で言われている成人発達理論の発達段階の話も、パラダイムの超越を知る上で重要な知識になると思います。この本で言われている最終発達段階が、パラダイムの超越ができている状態だと思います。全人口の1%未満らしいです。
今では、自分の幸福度増幅システムにおいては、さまざまなパラダイムを一歩引いた視点から見ることができるようになっていると感じます。そして(まだまだ部分的にですが)目的に応じたパラダイムを意図的に選択するということもできるようになっている気がします。
その結果、外部環境が急激に変化したとしても、外部環境がどれだけ自分に好ましくない状況だったとしても、満たされていると思えるようになりました。
これが極まると仏教でいう悟りの境地(無為自然)のような状態になると思います。死ぬまでには辿り着きたいなと思っています。
最後に
システム思考は、人間の思考力を拡張してくれる素晴らしいツールだと思うので、紹介させていただきました。考えることが仕事の人や、考え事が好きな人のお役に立てたら嬉しいです。
この記事が参加している募集
よろしければサポートお願いいたします。いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!