優れた起業家が実践する「5つの原則」 エフェクチュエーション
MOROHAの「革命」ってめっちゃいい曲ですよね。トレーニング中に聴くと普段よりもパワーが出ます。脳がパンプアップされて血管が拡張し、いつもより多い回数を挙げられるようになります。でも、MOROHAって「諸刃」から来てると思うんですよ。よく言われる「つるぎ的なアレ」です。
そして例にも漏れず、MOROHAを聞いて無理をしてしまい、ベンチプレス中に右肘を怪我してしまったあたまがきんに君です。
なんで急にMOROHAの話をしたのかというと、MOROHAが今日紹介する「エフェクチュエーション」の使い手だったからです。
この記事を読もうと思った人はエフェクチュエーションに興味がある方だと思いますが、時短でエフェクチュエーションを感じたいという方は、MOROHAの革命を聴くことをオススメします。
それでは、「乾杯」。じゃなかった。「本題」に入ります。
要約
エフェクチュエーションとは
エフェクチュエーションとは「熟達した起業家に対する意思決定実験から発見された、高い不確実性に対して予測ではなくコントロールによって対処する思考様式」です。
これと対照的な思考様式がコーゼーションといいます。コーゼーションは、不確実性への対処の基本方針として、追加的な情報を収集・分析することによって不確実性を削減することが目指されています。
こちらが我々の中では一般的な思考様式で、まず行動を起こす前にできる限り詳しく環境を分析し、最適な計画を立てることを重視します。
エフェクチュエーションには5つの原則があるので、それを一つずつ馴染みのあるコーゼーションと対比しながら説明していきます。
1. 手中の鳥の原則
手中の鳥の原則とは、不確実な環境の中でネクストアクションを決めていく際の思考様式です。
エフェクチュエーションに基づく考えでは、すぐに具体的な行動を生み出すことが重要という価値観があります。そのため、手持ちの手段から実践可能な行動を選択するということが重要になります。
手持ちの資源は以下のカテゴリで考えてみると整理されます。
上記の3カテゴリに余剰資源(利用されていない技術だったり、過剰人員、遊休設備、世の中の人に必要とされていなかったり、無意味や無価値とされているものやこと)を加えて、「私は何ができるか」を考えていきます。
具体的な行動を決定する上では、「私は誰か」に立ち返り、「自分がその行動をすることを想像するとワクワクするかどうか」が重要になります。この時点ではアイデアが優れているかどうかは関係なく、自分がそのアイデアを実行する意味を見出せるかが最重要になります。
そして具体的に行動することによって得られた情報や結果が、初めは想像もできなかったような行動を可能にさせていきます。
2. 許容可能な損失の原則
許容可能な損失の原則とは、あるアイデアを着想した際に「本当にそれを実行するのか」あるいは、複数のアイデアがあった場合に「どのアイデアを実行するのか」を決める思考様式です。
許容不可能な損失というのは、起業家がそれ以上取り組みを継続できなくなる状態になることです。許容可能な損失の原則に基づき、行動へのコミットメントを行うことで取り組みが継続さえできれば、行動が失敗に終わったとしても再チャレンジできるかつ、前回の失敗を今後の成功確率を上げる学習機会とみなせるようになります。
コツはできるだけ一歩の幅を小さくすることです。本当に必要な資源を最小化したり、余剰資源を使ったり、固定費を変動費にできないかを考えたりすることで行動リスクやコストを下げ、失敗した場合の損失を最小限にできます。
熟達した起業家は、不確実なリターンのために大胆な行動をとるという印象かもしれませんが、「避けられるならば絶対にリスクは取るべきではない」と考えています。
リスクの避け方として、「損失を許容できる資源が異なる相手」とパートナーシップを組むことも挙げられます。
3. レモネードの原則
レモネードの原則とは、アクションを起こした結果、予期せぬ事態が発生した場合の行動様式です。
コーゼーションで考える場合は、予定外に起きてしまったことは意味がないことだったり、無視されるものとして判断されがちです。ですが、その事実を別の見方をすることで、自分の手中の鳥にできる可能性が出てきます。
また、失敗から学ぶことができれば、今後のアクションの成功確率を上げることに繋がります。
予期せぬ事態(偶然)を活用するためには次の4ステップが必要になります。
予期せぬ事態に気づく
同じ現実に対する見方を変える(リフレーミング)
予期せぬ事態をきっかけに「手持ちの資源」を拡張する
新たに何ができるか着想する
このような形で仮に失敗だと思えるような結果に終わったとしても、リフレーミングによって手持ちの資源を拡張していくことができれば、許容可能な損失の原則を補完するかたちで機能することになります。
4. クレイジーキルトの原則
クレイジーキルトの原則とは、パートナーシップに関する思考・行動様式です。
アイデアの時点で良し悪しを評価すること以上に重要なのは、そのアイデアに進んで参画してくれる顧客をはじめとする様々なパートナーを獲得する行動であると考えます。
エフェクチュエーションに基づくパートナーシップの考えでは、自発的な参加者を重視しています。その理由は、コーゼーションのように何らかの目的や報酬などによって関係性を構築する場合、目的が達成できそうにないと思った時点や、予定していたコミットメントが提供できなくなった時点や、報酬が支払えなくなった時点で関係性が破綻してしまいます。
パートナーは資源だけでなくビジョンももたらしてくれるため、多様で想像もつかないような関わり方に発展することがあります。そのため関係性を保ち続けることは重要になります。
そのため、求めていたコミットメントが提供できないと言われてしまったとしても、レモネードの原則に基づいてパートナーシップを考えてみることが重要です。
パートナーシップを構築する際は、積極的にアイデアについて説明すること(selling)以上に、相手の話を聞くこと(asking)が重要になります。「相手の手持ちの資源が何か?」や「許容可能な損失がどのようなものなのか?」や「自分の手持ちの資源とシナジーを生み出すものがないか?」を聞き出して、相手が提供できるコミットメントを探していきましょう。
5. 飛行機のパイロットの原則
不確実な未来に対して熟達した起業家が持つ世界観を反映したもので、エフェクチュエーション全体のサイクルに影響してくる思考様式です。
不確実性のコントロールの方法というのが、「手中の鳥の原則」、「許容可能な損失の原則」、「レモネードの原則」、「クレイジーキルトの原則」によるエフェクチュエーションのサイクルを回していくことです。
そのサイクルを回すことによって、自分が世の中に与えることができる影響の大きさを増やしていくことや、増やしていけると思えることが重要になります。このマインドセットを持っていれば、無力感を感じたり、能動性を失うことなく活動を続けることができます。
思ったこと
冒頭の「MOROHAがエフェクチュエーションの使い手だった話」の回収
「飛行機のパイロットの原則」の章に「自らを取り巻く半径2メートルの世界を変える」と書いてありました。MOROHAも自分を取り巻く身近な世界に焦点を当てている点では共通しています。
エフェクチュエーションを極めすぎたMOROHAは半径0mの世界を見ていました。そこまでくると逆に外の世界に影響を与えていない説はありますが、現時点で彼らは日本中を変えているのではないでしょうか。
居酒屋の意気込みから始まった半径0メートルの世界を広げていったんですね。かっこいいです。この記事を読んだ方にとっては、彼ら同様に今日が革命を起こす幕開けの夜なのではないでしょうか。
革命を起こすのがレモネードの原則で、革命を起こされるのがマリーアントワネットの原則
思考に先立って行動をする1年にしたい
自分の長所が思考力だったので、どうしても思考が先行してしまい、行動が遅れがちになっていました。このままだと老害になってしまうんじゃないかという懸念があったんですが、エフェクチュエーションではその悪い癖を完全に直せるなと思いました。2024年の目標はエフェクチュエーションの使い手になることになります。
今年中に半径何mの世界を変えることができるか楽しみです。
エフェクチュエーションが有効に機能する問題空間について
全ての問題空間に対してエフェクチュエーションが有効というわけではなく、コーゼーションの方が優れているケースもあると書かれていました。
結局エフェクチュエーションも限定的なものなのかと思うかもしれませんが、大事なのは自分の中に標準的にインストールされているコーゼーションと対立構造にあるエフェクチュエーションという行動様式を学べたことだと思います。
対立構造を作れば片方の行動様式を盲信することもなく、弁証法的に発展させることができます。そこまで行かずとも使い分けができるようになるだけでも十分すぎる効果を発揮すると思います。
パートナーシップに関するマインドセットが変わったよ
変化その①
「上の人と繋がっていきたいけど今の自分には与えられるものがないからやめておこうかな。」と思っていましたが、「私との関係性構築にかかる労力(損失)が相手にとって許容可能だった場合はどんどん関係性を築いていこう。」に変わった。
変化その②
「目的が定義できない話の場や関係性はただ関係性維持コストがかかるだけだな。」と思っていたけど、「基本的には思ったより関係性維持にコストはかからないし、関係性が定義できなくても他者の資源やコミットメントに対して自分が意味をつけられていないだけだから、askingを通して他者理解を深めていくことが大事だよね。」に変わった。
変化その③
「関係性構築よりも自分自身で成長していくこと」を重視していたが、他者のコミットメントも手持ちの資源になると考えると、「自分が成長するよりもパートナーシップを築く方が圧倒的に手中の鳥の増加速度が向上するので、パートナーシップを強化することを優先度高く行う。」に変わった。
リフレーミングは真空ジェシカから学べるらしい
関西人のめっちゃおもろいマブダチから真空ジェシカのpodcastでリフレーミングが鬼鍛えられると教わったので聞いてみたい。真空ジェシカの川北が同じ事実を別の視点から切り取って面白いことを言う能力が高いらしい。
思春期くらいに大体の人が身につける、なんか恥ずかしいことがあってもネタに変えるマインドとかまさにリフレーミングですね。辛いことがあっても成長機会みたいなこともそうですよね。
エフェクチュエーションの文脈だと、今まで価値がついていなかったこと(余剰資源や意図しない結果や関係性等)に価値をつけるみたいなことになりそう。これは「敗者の呟き」のPodcastでも言われてたけど、まさにイノベーションらしい。
人間関係の悩みとかもリフレーミングによって劇的に変わるし、この辺り使いこなせるようになるのが良さそう。すでに内省によってバイアスを取り除いて別の視点から自分の価値観を見てみるということはできてきたので、それを外の世界に対しても行えるようになりたい。
たまたまESBIを知ることができて、自分がやりたいことを整理できた
クレイジーキルトの原則を実践することが自分の大きな課題だと思ったので、すでにクレイジーキルトを実践していそうな人(広いネットワークを持つ人)に話を聞きにいきました。いろいろ話せましたが、その会話の中でたまたま得ることができたESBIというフレームを知ることができました。
ESBIはお金の稼ぎ方を4つに分けた図になります。「金持ち父さん、貧乏父さん」で有名になった図で、まぁいわゆるアレ系でよく使われるやつです。
ESBIとはお金の稼ぎ方を4つに分けた図になります。人口割合でいうとE・Sが9割くらいで、B・Iが1割くらいです。一方で富の量でいうと、E・Sが1割くらいでB・Iが9割くらいだそうです。
アレ系だと、収入を増やすのに時間を費やしてばっかだと幸福になれないので、働きながらでもいいから少しずつBに移動しようという話になり、じゃあ仕組みとはなんぞやという話になり、DtoCで需要がなくならない日用品(最近だとウェルネス産業)でサブスクで中抜きしようみたいな話になります。
話を聞いて理解はしましたが全然魅力を感じなかったんですよね。私の価値観では、自分に与えられた人生の時間は全て退屈しのぎであること。退屈凌ぎのために何か自分にとって本当に価値があることをしたい。そしてそれが社会貢献であること、社会をよりよく変えていくことです。現状では、資本主義社会の限界や社会の価値観について関心があります。そして資本主義の限界はESBIで簡単に説明ができると思っています。資本主義社会においてはお金によって豊かさが手に入りますが、そのお金が一部に大きく偏ってしまっていることです。
なので、起業をして富の大半を持っている投資家からお金をいただいて、社員を高賃金で雇い、還元することがやりたいと思っています。それと同時に、不条理を生み出している資本主義の仕組み(ESBIの構造)自体を進化させたいと思っています。
例えばお金以外によっても豊かさ(選択肢)が増やせるような社会にするとかです。なので社会主義とも違います。多様性を後押しみたいなところとか、社会の価値観を柔軟(多様)にするとかそういう方向になります。
今回は「手中の鳥の原則」と「許容可能な損失の原則」と「クレイジーキルトの原則」に基づき行動を起こした結果、何かしら勧誘を受けるというあまり良くない時間になってしまいましたが、それを「レモネードの原則」を元に自分にとって価値のあること(やりたいことを整理できた、ESBIを知ることができた、Bの人の思考体系を知ることができた、つながりは維持された)に変えることができました。
エフェクチュエーションにおいてはこれが非常に重要なマインドセットだと思います。今回自分が被った損失は特に何もありません。強いて言えば会うためにかけた労力とスタバ代くらいでしょうか。
社会人サッカーの先輩であり、起業家の先輩でもある方のaskingが参考になったよ
エフェクチュエーションの本を読んだ時は、askingによってどうやってコミットメントの獲得までいくのかイメージができませんでした。
しかし、たまたまお世話になっている起業家の先輩のaskingを見る機会があり参考になったので共有します。
決定的な違いは、「自分の資源を把握していて、ある程度アクションの方向性も決まっており自分の土俵を把握していること」でした。
自分の土俵を把握しているので、相手からシナジーを生み出せそうな部分をベースに深掘りしたり、相手の許容可能な損失はどのあたりか、相手が行動を起こしていくためにボトルネックになっている部分は我々のコミットメントで解決できうるかみたいな部分を掘り下げていました。相手にとって許容可能な損失や手中の鳥については、相手の価値観やライフスタイル等を知っていく必要があるので、その辺りについても興味を持たれていました。
余談:エフェクチュエーションの行動様式はLayerXの行動指針にも見られるよ
単純にLayerXが好きなので余談中の余談ですが思ったことを書きます。
「小さく初めて、振り返りを徹底する」とかはエフェクチュエーション全体のプロセスの進め方ですよね。手中の鳥の原則と許容可能な損失の原則に基づいて行動して、分かった結果から手中の鳥を拡張していってネクストアクションを決める。みたいな。
NoじゃなきゃGoとかはまさに許容可能な損失の原則のことですね。
これなんてまさに飛行機のパイロットの原則ですよね。
あとは、LayerXはサービスやビジョンへの共感による採用ではなく、カルチャーや行動指針をベースに採用しているみたいなことを聞いたことがあるような気がしますが、そこもエフェクチュエーションのパートナーシップの考え方に近いんだろうなと思う。
社員とパートナーシップを結ぶ際に、
報酬だと、想定通りに年収が上がらなければ抜けるとか
サービスが好きとかだと、サービスが崩れたり好きなサービスにアサインされなかったりしたら抜けるとか
ビジョンの実現手段が好きとかだと、手段が変わったりビジョンの実現可能性が下がってしまったら抜けるとか
そのため、人の行動原則みたいな変わりにくい部分をベースに合う人を集めて、都度必要なコミットメントをお願いするみたいな部分が採用においては参考になりそう。
また、エフェクチュエーションの行動様式のようなカルチャーにすると、自己組織化も進むし、裁量もめちゃくちゃあるから、自然と自発的になるよね。
特にCTOとか自分で考えて動ける人たちからしたらかなり好きなカルチャーかもしれない。自発的なコミットメントを提供してくれる人ホイホイなカルチャーにしているから、あとはカルチャー発信していれば優秀な人たちが自動で集まってきそう。その辺の設計めっちゃ上手いと思う。
新卒とか、自発的になりきれない人がいても、優秀な人たち多いからマネジメントでカバーできるんだろうな。
まぁLayerXのカルチャーとか行動指針については、結構システム思考的に作られている気がする。システム思考的に考えた時に、組織や個人が陥りがちな落とし穴にハマらないような行動指針を設計している印象。これが超絶スキなんです。
最後に
みなさん、準備はいいですか?
半径0mの世界を変えることから始める
今夜が革命を起こす幕開けの夜です。
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